Case Library
森をつなぐ歩道橋 ― アニマルパスウェイによる「生命の道」
山梨県北杜市を起点に全国標準化へ進んだ アニマルパスウェイは、道路インフラを生態系ネットワークの一部として再設計する日本初の社会実装モデルである。
01Context|背景
日本の国土を網の目のように走る道路インフラは、人々の経済活動を支える一方で、森に住む野生動物たちの生息域を「分断」し続けてきた。
特にヤマネやリスなどの樹上性動物にとって、数メートルのアスファルトは越えられない絶壁となり、個体群の孤立やロードキル(交通事故)の直接的な原因となっている。
これまでの道路建設は「効率と安全」に特化してきたが、ネイチャーポジティブの文脈において、道路は「壁」ではなく「共生のインターフェース」へと再定義されつつある。
03Tension|トレードオフ
コストと維持管理:
従来の「通るだけの道路」に比べ、アニマルパスウェイの設置・維持には追加コストが発生する。これを「単なる支出」と見るか、長期的な「自然資本への投資」と見るかの対立。
実効性の検証:
野生動物が実際に利用するかどうかのモニタリングが必要であり、技術的なノウハウが現場の土木技術者にまで浸透していない課題。
04Outcome|結果
国土交通省の報告によれば、アニマルパスウェイを始めとした動物のための経路(陸橋型、トンネル型、樹上型)の設置により、ヤマネやニホンカモシカ、タヌキ等の多様な種による利用が確認されている。
これにより、以下の「厚み」が生じている。
遺伝的多様性の維持: 分断されていた個体群が交流し、長期的な生存確率が向上した。
インフラの価値転換: 道路が「自然を壊すもの」から「生態系ネットワークの一部(グリーンインフラ)」へと進化。
社会実装のモデル化: 令和7年の事例集策定により、特定の地域活動から「全国の標準的な道路設計」へと、構造的な変革が始まっている。
05Sources|参考資料
国交省 ネイチャーポジティブ取組事例集(R7.2)
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/utilization/pdf/nature-positive.pdf